認知症が重症化すると銀行は預金の払い戻しに応じてくれない
この記事を書いたのは:川口 正広
一般社団法人全国銀行協会は、認知判断能力の低下した方の金融取引を行う際の考え方を取りまとめた( https://www.zenginkyo.or.jp/news/2021/n021801/?fbclid=IwAR07asL9YbGtR5t9UT8TvY1jRontFKBDJaA5Ouz9zRVAu0qwRTkhZfyQ0IM )
1)本人が認知判断能力を喪失していることを確認する方法としては、本人との面談、診断書、医療介護費の内容等のエビデンスを確認する。
2)その上で、認知判断能力の低下した本人との取引においては、顧客本人の財産保護の観点から、親族等に成年後見制度等の利用を促すのが基本である。
3)もっとも、認知判断能力を喪失する以前であれば本人が支払っていたであろう本人の医療費等の支払い手続きを親族等が代わりにする行為など、本人の利益に適合することが明らかである場合に限り、預金の払い戻しに応じる。
4)投資信託等の金融商品の解約等の依頼については、より慎重に対応する(簡単には認めない)。
要するに、本人の医療費等の支払など、本人の利益に適合することが明らかな場合に限り、親族による預金の払い戻しに応じるということです。
実際の銀行実務は各銀行に委ねられることになりますので、どこまで柔軟に対応していただけるかは不明ですし、この考え方によっても、例えば、家族のための医療費や生活費の支出、本人の旅行費用などはもちろんのこと、本人の生活費も金額によっては払い戻しを拒否される可能性がありそうです。
ただ、成年後見人制度は使い勝手が悪く、なかなかお勧めしにくい制度となっています。
そのため、高齢者の方には、すべて普通預金にしてキャッシュカードを作っておくことをお勧めすることがあります。認知症が重症化すれば、窓口での手続ができなくなりますし、定期預金の解約などもできなくなりますが、キャッシュカードがあれば、家族でも払戻は容易です。
ただ、キャッシュカードだと親族によって本人の財産が食い物にされるリスクが高まるわけで、このあたりは悩ましい問題です。
この記事を書いたのは:
川口 正広