離婚問題

祭祀主宰者の変更と分骨の請求

この記事を書いたのは:川口 正広

昭和46年に結婚した夫婦は男の子を授かったが、その子は10歳で他界した。子供の相続人は父と母である。父が喪主を務め、父が墓を建てて子供を納骨していた。

しかし、平成7年に父と母が離婚した。その際、墓は父が管理することが合意されていた。離婚後も、父は墓地の管理料を支払い墓参していたし、母も随時墓参りをしていた。

離婚後20年を経た平成27年、父は自らの死後に墓が無縁墳墓になることを懸念し、父の実家の親族が墓参できるように、実家の墓所内に新たな墓を建てて、そちらへ男の子の遺骨を改葬した。しかし、そのとき母には知らせていなかった。

男の子の遺骨が改葬されたことを知った母が、改葬先の墓が遠方で墓参りが困難になったとの理由により、墓の祭祀財産の承継者を母に変更すること、また予備的に遺骨の分骨を求める請求を家庭裁判所に申し立てた。

家庭裁判所では母の請求は棄却され、高等裁判所も次のように述べて母の請求を棄却した。

母は、一方的に父が子供の遺骨を改葬して墓参に支障を生じさせたから祭祀主宰者としての適格性を喪失したので、祭祀主宰者を母に変更すべきと主張している。

しかし、父は長きにわたって墓を管理し、自身が高齢化するにつれて自身の死亡後の無縁墳墓となることを懸念して改葬を決めているのであって、その必要性や合理性が認められる。母に連絡しなかったことは配慮を欠いているもののすでに離婚から20年を経て没交渉であったためやむを得ない面もある。そうすると、父は祭祀主宰者としての適格性を喪失していない。

また、母は、子の遺骨の分骨を求めているが、父が母による墓参を拒んでいる事情はないし、むしろ、父は実家の墓とは別に墓を建てて改葬するなど母の心情や墓参の便宜に配慮している。他方、母は父による祭祀にはこれまで異議は述べずに一任してきたという経緯がある。

そうすると、父が分骨に反対していることも考慮すると、分骨を認めなければならない特別の事情はない。よって、母の請求はいずれも認められない。

@大阪高裁平成30年1月30日決定(判時2398号83頁)

遺骨をめぐる紛争です。離婚が多くなった現代では、増えてくる可能性がありますね。


この記事を書いたのは:
川口 正広