相続

面会妨害禁止仮処分

この記事を書いたのは:川口 正広

平成29年6月、福岡県に住んでいた両親を連れて、長男が横浜市の自宅に連れて帰ったが、長女にはそのことは伏せていた。その後、長男は地域包括支援センターに相談し、認知症があるため横浜市内の老人ホームに両親を入居させた。しかし、長男は、地域包括支援センターにも老人ホームに対しても、長女に両親の居場所を知らせないようにお願いしていた。

平成29年9月、長女は長男に対して、家庭裁判所に対し、親族間の紛争調整の調停を申立てた。しかし、長男は調停に出席しなかった。両親も会いたくないとの気持ちだと電話で伝えてきた。長女は、地域包括支援センターに両親の所在を問い合わせたが、センターは長男から知らせないように言われているとのことで教えてくれなかった。

平成29年12月、長女は、家庭裁判所に対して、両親の成年後見人選任申立てをした。家裁調査官が長男や入居している可能性のある施設に問合せをしても、両親の入居の有無について回答が得られなかった。

そこで、平成30年、長女は、地方裁判所に対し、長男が両親との面談を妨害することを禁止する仮処分の申し立てをした。

裁判所は、次のように述べて長女の請求を認めた。

長女は両親の子であり、その両親はいずれも高齢で認知症を患っていること、両親の意思に明確に反して両親の平穏な生活を侵害するなど、両親の権利を侵害するものでない限り、長女は両親に面会をする権利を有している。

また、長男は長女に両親の所在を知られないよう措置をとっており、長男は家裁調査官に対しても両親の所在を明らかにしなかった。長男は、両親の意向を尊重しているだけで妨害している事実はないと主張するが、長男の行為が、長女と両親との面会ができない状況の作出に影響している。

よって、長女と両親との面会を妨害することを禁止する。

@横浜地裁平成30年7月20日決定(判時2396号30頁)

子供の一人が高齢の親を囲い込んで、将来の相続に備えるということが頻発しているようです。親を囲い込むのは、経験上、男女の違いはありません。決定書では、トラブルの背景については触れていないのですが、そうとうな恨みがあったと推察されますね。悲しいことです。


この記事を書いたのは:
川口 正広