死亡保険金は遺産分割のときにどう影響するのか
この記事を書いたのは:川口 正広
被相続人の相続人は母と妻であったが、死亡当時の被相続人に遺産は、459万の預金だけでした。
しかし、被相続人は妻を受取人とする死亡保険金2100万円を作っていました。
そこで、相続人の一人である母から被相続人の妻に対し、死亡保険金を特別受益にように持ち戻した上で遺産分割する金額が算定されるべきだから、預貯金459万円はすべて母が取得するべきという主張をし裁判となった事案がありました。
最高裁は、死亡保険金の扱いについて、原則として特別受益のように持ち戻しの対象にはならないが、著しい不公平が生じるという特段の事情があるときには民法903条の類推適用により持ち戻して計算するという立場をとっています。
そこで、本件について、最高裁のいう特段の事情があるかどうかが問題になりましたが、
死亡時の遺産と比較すると本件死亡保険金が非常に高い金額となっているものの、
被相続人の妻は子がなく借家住まいであること
死亡保険金は妻の生活を保障するためのものであること
一般的な生命保険金額と比べても高額なものではないこと
母の方は父から相続した不動産に暮らしていること
などの事情を指摘して、
本件死亡保険金は持ち戻しをしないと判断しました。
この裁判例では、死亡保険金を持ち戻すかどうかは、単に死亡保険金の金額と死亡当時の遺産との比較だけではなく、そのおかれた具体的事情を考慮するとしています。
具体的事情を考慮することになると、弁護士としては裁判結果の予測をすることが本当に難しくなりました。
@広島高裁令和4年2月25日決定(判時第2536号59頁)
この記事を書いたのは:
川口 正広