法定後見の開始を阻止したい
この記事を書いたのは:川口 正広
私は、医師として仕事をしてきましたが、抑鬱的になりクリニックを閉院して入院したこともありました。そして、衝動的に買い物をしてしまったことがあったことから、私の妻が、家庭裁判所に対して、私についての保佐人選任申立をしてしまいまいた。
私は、自身の病状も落ち着いていることもあって反対でした。しかし、家庭裁判所は、私について保佐開始の審判を出してしまいました。
私はどうしても納得できないため抗告(異議申立)をし、それと同時に、私の話を理解してくれる実兄との間で任意後見契約を公正証書で締結しました。
そして、抗告の理由として、法定後見である保佐開始よりも任意後見契約が優先されるべきであるから、保佐開始の審判は取り消されるべきであると主張しました。
しかし、高等裁判所は、任意後見契約がなされていても、本人の利益のために特に必要があると認めるときに限り保佐開始の審判をすることができるところ(任意後見契約法10条1項)、私が激しい躁状態を生じさせたときに浪費をしてしまう恐れがあるとして、同意権や取消権による保護が必要と考えられるから、本人の利益のために特に必要があるとして、保佐開始の審判を維持してしまいました。
@広島高裁令和2年8月3日決定(判時第2495号63頁)
追記
任意後見契約を締結して法定後見の開始を阻止しようとした事案ですが、この事案ではうまく行かなかったようです。ただ、同様の目的のために任意後見契約を締結する事例は散見されており、実際に法定後見の開始が阻止された事案も存在しています。
この記事を書いたのは:
川口 正広