裁判のときの弁護士費用を相手方に請求できないの?
この記事を書いたのは:川口 正広
裁判になると弁護士費用が掛かりますが、その費用を相手方に対して請求できないのでしょうか。
まず、不法行為の被害者が損害賠償を請求する訴訟等に要した弁護士費用については相当な範囲で賠償が認められるというのが確立した判例です(最高裁昭和44年2月17日判決)。
また、安全配慮義務違反を理由とする債務不履行に基づく損倍賠償についても不法行為とほとんど変わるところがないとして弁護士費用を請求することができるとされます(最高裁平成24年2月24日判決)。
しかし、契約上の債務(特に履行内容が契約から一義的に確定する債務)の履行を求める訴訟等に要した弁護士費用については、債務不履行に基づく損害賠償として請求することはできないと明らかにされました(最高裁令和3年1月22日判決)。
最高裁は、その理由について最高裁は次のように説明しています。要するに、契約上の権利というのは不履行となることも想定してリスクヘッジできるから、それに失敗しても自己責任だと言いたいようですね。
「契約当事者の一方が他方に対して契約上の債務の履行を求めることは,不法行為に基づく損害賠償を請求するなどの場合とは異なり,侵害された権利利益の回復を求めるものではなく,契約の目的を実現して履行による利益を得ようとするものである。また,契約を締結しようとする者は,任意の履行がされない場合があることを考慮して,契約の内容を検討したり,契約を締結するかどうかを決定したりすることができる。加えて,本件債務は,同契約から一義的に確定するものであって,上記債務の履行を求める請求権は,上記契約の成立という客観的な事実によって基礎付けられるものである。そうすると,土地の売買契約の買主は,上記債務の履行を求めるための訴訟の提起・追行又は保全命令若しくは強制執行の申立てに関する事務を弁護士に委任した場合であっても,売主に対し,これらの事務に係る弁護士報酬を債務不履行に基づく損害賠償として請求することはできないというべきである。」
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川口 正広