行政

生物学的な性別が男性の性同一性障害者における、職場の女性トイレの使用に関する事例

この記事を書いたのは:川口 正広

生物学的な性別は男性であるが自認する性別は女性であり、性同一性障害である旨の医師の診断を受けている国家公務員が、職場における女性トイレの使用を要望していたが、その執務室がある階と上下の階の女性トイレの使用を認めず、それ以外の階の女性トイレの使用を認める処遇を受けていた。

そこで、性同一性障害者である女性(生物学的には男性)が、裁判を提起したという事案である。

最高裁判所は、

①性同一性障害者は、男性トイレか執務室から離れた階の女性トイレを使用せざるを得ない

②性同一性障害者が所属する部署の職員に対する説明会においては、数名の女性職員が違和感を抱いているように見えたにとどまり、明確に異を唱える女性職員がいなかった

③性同一性障害者は、女性ホルモンの投与を受けるなどしており、女性の服装で勤務しており、執務室から離れた階の女性トイレを使用していたことによるトラブルは生じていない

④長期間、処遇の見直しについて検討されたことがない

以上の事実から、職場の女性トイレの使用を制限する措置は違法であると判決した。

@最高裁令和5年7月11日判決(家庭の法と裁判第48号35頁)

いろんな意見が出そうな問題ですね。個人的には、女性職員から異論が出ていたかどうかが重要な判断要素になっていることが興味深いと感じています。ただ、部署の職員は人事異動でどんどん変わっていくから、女性職員の意向は人事異動があるたびに確認する必要が出てくるのでしょうかね。


この記事を書いたのは:
川口 正広