探偵会社による行動調査(ビデオ撮影)は許されるか
この記事を書いたのは:川口 正広
交通事故の裁判資料(証拠)を獲得する目的で、探偵会社が個人の動静をビデオ撮影した行為が不法行為に基づく賠償責任を生じさせるかが争われた事案がありました。右足に後遺症があるとの主張を弾劾するための証拠収集だったようです。
前提として、人はみだりに自己の容貌等を撮影されないという人格的利益を有していますが(最高裁昭和44年12月24日判決)、撮影行為が不法行為上の違法行為となるかどうかは、撮影場所、撮影目的、撮影態様、撮影の必要性等を綜合考慮して、被撮影者の人格的利益に対する侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかで判断するとされています(最高裁平成17年11月10日判決)。
本件でのビデオ撮影は、
①裁判での証拠利用する目的であること
②公道から、第三者が容易に視認できる場所で撮影されており、撮影された動静も洗濯物干し、新聞を取りに行く、ゴミ出しなど第三者に対して秘匿するようなものではないこと
③玄関外での午前6時から午後1時までの不相当に長時間なものではないこと
④ビデオ撮影は、探偵業法2条(解釈運用基準)が想定する調査手段であることなどから、
本件ビデオ撮影は、社会生活上受忍すべき限度を超えたものとは言えないとし、不法行為上の違法行為であるとは言えないとしました。
@大阪地裁令和元年9月26日判決(自保ジャーナル2058号178頁)
この記事を書いたのは:
川口 正広