財産管理

一部分割が残余財産の分割に及ぼす影響

この記事を書いたのは:川口 正広

相続において遺産分割協議をまとめるときに、まずは一部の遺産についてだけ遺産分割を成立させることがときどきあります。特に、まずは、不動産だけの遺産分割協議書を成立させることがあります。

しかし、その先行した一部分割が、残りの遺産の遺産分割にどのような影響を与えるかというのはよく考えないといけないところです。具体的には、先行した遺産分割であまり遺産を取得しなかった相続人が、残りの遺産の遺産分割のときに先行した遺産分割の不均衡を考慮されることになるのか、ということです。

もちろん、相続人間で話し合いで解決できるのであればどのようにでも解決できるわけですが、相続人間で争いとなった時に裁判所がどのように判断するかを知る必要もあります。

裁判所は、遺産分割とは要するに遺産を分けるという合意であり、先行した遺産分割の結果が残りの遺産分割のときに不均衡が考慮されるかどうかは、先行した遺産分割の合意の意思解釈によって定まると考えている傾向が強いです。先行した遺産分割を合意するときに、残りの遺産分割のときには、不均衡なところは考慮しよう、というようなやりとりがあるのかないのか、が大事になるのでしょうね。

なお、令和元年7月17日の大阪高裁決定は、先行した遺産分割に不均衡があっても、残りの遺産分割のときは不均衡は考慮されず単に法定相続で分割しています。一部分割をするときは、慎重に考えないといけないということになりますね。

@大阪高裁令和元年7月17日決定(判例時報2446号28頁)


この記事を書いたのは:
川口 正広